コラム
5分で分かる血友病保因者のコト
血友病についてのインターネットを検索すると多くの情報が手に入りますが、血友病保因者についての情報やサポートは十分整っているとはいえません。
本記事では、血友病や血友病保因者について分かりやすく簡潔にまとめました。
どこに相談していいか分からず悩んでいらっしゃる保因者女性は是非ご一読頂けたら幸いです。
1、血友病とは?
血友病とは血液中の血を固めるタンパク質の一部が欠乏し、ケガや内出血をした時に先天的に血が止まりにくい病気です。
血が固まる仕組みとして複数のタンパク質(血液凝固因子といいます)が関係しており、そのタンパク質の中で8番目のタンパク質(第Ⅷ因子)が欠乏している病気を血友病A、9番目のタンパク質(第Ⅸ因子)が欠乏している病気を血友病Bといいます。
血友病はX連鎖劣性遺伝という遺伝性の病気なため、主に男性が発症します。(ごく稀に女性が発症するケースもあります)
2、血友病患者数はどれくらいいる?
令和2年度血液凝固異常症全国調査によると、日本の血友病患者数は約6,700人と報告されています。
※血友病Aは5533人(82.1%)で、血友病Bは1205人(17.9%)
3、血友病はどんな症状がある?
ケガ、打ち身・青あざ、血のコブができたり、筋肉や関節の中に出血を起こしたりします。
目に見えない出血
筋肉内出血-筋肉内出血するとはれや痛みが続きます。
関節内出血-足、ひざ、ひじの関節に出血するとはれや痛みが続きます。
→筋肉や関節の出血の後遺症が重なると、さらに出血しやすくなったり関節が動かない状態になっていきます。
頭蓋内出血・脳内出血
目に見える出血
あざ、血のこぶ
口からの出血、鼻血
出血部位
※特に注意が必要な出血は、命にかかわる出血として、頭蓋内出血、消化管出血、また、重い後遺症が残る可能性のある出血として、腸腰筋出血があります。
4、血友病保因者って?
血友病の遺伝子を持っている女性のことを「血友病保因者」と呼びます。
血友病保因者とは、2本あるX染色体のうち1本に血友病の原因となる遺伝子変異を持っている女性のことです。
血友病の父親と血友病ではない母親の間に生まれた女子は、血友病の原因となるX染色体を父親から受け継いでいるため保因者となります。母親から受け継ぐもう1本の正常なX染色体があるため基本的には血友病を発症することはありません。
5、血友病保因者女性が気をつけるべきこと
出血傾向のある保因者女性は少なくありません。
これまで血友病保因者の女性に出血しやすい人がいるという認識はされてきませんでした。
しかし、2012年の世界血友病連盟(WFH)の調査によると保因者の約1/3は凝固因子活性が保因者ではない人の60%未満という報告がなされているように、保因者である女性も出血が止まりにくいという症状が発生している認知が広まりつつあります。
血友病を発症している訳ではないため、月経過多や内出血などに悩まされながらも相談することなく今まできたという保因者女性は少なくありません。
保因者女性へのインタビューから抜粋
“自分自身の成長の過程の中で、今になって思うと「血友病保因者だからだったんだ!」と思うところがいくつかあります。例えば生理がそうでした。10代、20代の頃は出血量が多く、生理用品も頻繁に変えなくてはならないので日常生活に支障をきたすほどでした。生理の時は自転車に乗ることにも抵抗がありましたし、長時間移動などはもってのほかというような状況でしたね。ただ、それが血友病保因者だからだという理解ではなく、みんなそんなものかと思っていました。”
インタビュー全文:母から娘への伝達はどうする?時代と共に変わる血友病保因者に対する認識
血友病保因者の中には、凝固因子活性が40%以下の低い傾向にある方であれば出産時に輸血や凝固因子の補充療法が必要になる場合があります。
血友病保因者女性も自身の出血傾向を把握しておくことが大切です。医療機関でご自身の血中凝固因子を測定し把握することをお勧めします。
保因者女性の出産について正しい知識を持った医療機関で出産しましょう。
出産は保因者女性、赤ちゃんのどちらに対しても十分に安全を考慮する必要があります。
出産は多くの出血を伴いますので、凝固因子活性が低い方であれば輸血や製剤投与の準備が必要ですし、生まれてくる赤ちゃんが男の子で血友病だった場合分娩に伴う頭蓋内出血のリスクがあります。経膣分娩であれば鉗子分娩や吸引分娩を避けるべきですし、帝王切開を推奨する医療機関もあります。
全国には血友病のブロック拠点となる病院があり、さらにブロック拠点病院と連携を取っている地域中核病院がありますので、これらの病院の産科を選ぶことで安心して出産に臨むことができます。
血友病に対する知識に乏しいクリニックもあるため、出産時の病院選びは注意が必要です。
保因者女性へのインタビューから抜粋
“自宅近くの病院からは対応できないと言われてしまったので、以前手術でお世話になった病院で出産しました。血友病保因者であることは医師に伝えていましたが、出産時に出血がひどく産後1週間はまともに起き上がれませんでした。退院時に、「血友病保因者は出血が多いから気をつけなくてはいけないんですよね。」と言われ今更そんなこと言われても、と。
その後は問題なかったからよかったものの、事前に伝えておいてもそんなものかと唖然としました。”
インタビュー全文:血友病保因者女性の悩み、誰に相談すればいいの?
6、血友病保因者女性が相談できる場所
保因者女性の悩みは”症状”だけではない
ご自身の症状や出産や育児だけが保因者女性の悩みではありません。
結婚を考えるお相手に血友病についてどのように理解してもらうのかという悩みは多くの保因者女性が抱えています。
現在では日常生活に支障をきたさないほど医療が進んでいますが、数十年前の血友病のイメージが残っており両親の反対にあって結婚を諦めざるを得ない方もこれまで見てきました。
保因者女性へのインタビューから抜粋
以前、結婚を考えていた相手がいて、その彼は両親の猛反対に合ったこともあって受け入れてくれませんでした。現在の夫は血友病や遺伝についてすんなりと理解してくれました。
インタビュー全文:血友病保因者女性の悩み、誰に相談すればいいの?
保因者女性が結婚を考えるお相手にどのように伝え、理解していただくかという点についてのケアは不十分だと言わざるを得ません。
私たちはばたき福祉事業団は、血友病患者の支援だけではなく保因者女性からのご相談も受け付けておりますし、血友病の研究を行なっている医師や遺伝カウンセラーをご紹介することも可能です。
また、血友病について分かりやすく説明できる血友病FACTシートというものもご用意しております。
血友病FACTシートはこちら
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