コラム
保因者女性のQ&A
1、保因者女性は血友病を発症しないと聞いてきたのですが、保因者も出血が多くみられるケースはあるのでしょうか?
女性保因者の凝固因子活性はそのヒトによって異なります。2つあるX染色体が必ずしも半分づつ働くわけではないからです。
中には凝固因子活性が40%未満となる女性もいらっしゃいます。その場合は、女性血友病と判断すべきです。そのため自身の出血傾向を把握するために医療機関でご自身の血中凝固因子を測定することをおすすめします。凝固因子活性に応じて手術や出産のときに血友病患者さんと同じように凝固因子の補充療法が必要になる場合があります。
2、保因者なのですが出産について気をつけておいたほうがいいことはあるのでしょうか?
保因者の出産は男児の場合に、医療者も血友病の可能性があることを十分に知った上で出産にのぞむ必要があります。
欧米では帝王切開が主流ですが、国内のガイドラインでは経膣分娩も可能であることが記載されております。経腟分娩を選択した場合は、吸引・鉗子分娩を避けます。これは、血友病患児の頭蓋内出血リスクが増加するという理由からです。経腟分娩では、可能な限り自然分娩として、分娩が遅延しそうな場合には、帝王切開分娩への切り替えを早期に判断できる医療機関をおすすめします。
分娩様式については、個々に慎重に選択することが大事だと思います。また、母体女性の凝固因子活性が低い場合は、分娩後出血がおこることもありえます。保因者の出産については、血友病に詳しい医療者が連携して対応できる医療機関に相談することをお勧めします。
3、血友病患者は筋肉注射をしてはいけないと聞きましたが、保因者でも同様なのでしょうか。新型コロナウイルスのワクチンが筋肉注射だと知り、自分は打って良いのか心配に思っています。
海外の推奨では凝固因子活性が10%以上のときには凝固因子の補充は必要ないとされています。
ただし、他の出血傾向となる血小板や内服薬についての確認が必要ですので、主治医に確認したほうがいいでしょう。一般的な注意として筋肉注射後に十分圧迫したり、局所を冷却することで、出血を最小限にできます。