コラム
血友病保因者の女性の“結婚”までをサポート。こんな時どうする?に細かくお答えします!
血友病家系女性・保因者のための情報サイト「生きる力を育てましょう」を運営する社会福祉法人はばたき福祉事業団です。
血友病保因者の女性は、成長のプロセスの中で「こんな時どうしたらいいの?」と迷うことが多々あると思います。血友病の症状こそないものの、保因者であることを自分でどのように受けとめているのか。そして将来を共にする可能性のある男性が現れたとき、どのように事実を伝えるのが良いのか。これらの問題は一人で抱え込むにはあまりにも負担が大きいと思います。
そこで今回は、私たちが血友病保因者の女性から相談をうけることが多い“結婚”を考えたときの自分との向き合い方、相手との向き合い方、そして伝達の方法などを、様々なシーンを想定しながらいくつかアドバイスをさせていただきたいと思います。
1、自分の置かれている状況を正しく理解する
「自分は保因者なのかしら?」もやもやしたまま成人してしまった方も多くいらっしゃるかもしれません。家族や親族に血友病と思われる症状を持った人がいるけれど、きちんと聞かされたことがないというケースは珍しくありません。自分の置かれている状況を何となく理解はしているつもりになっていても、血友病は遺伝する病気なのでやはり家族で事実を共有し、正しく理解することが第一歩だと思います。家系に血友病患者あるいは保因者はいるのか、そして自分は保因者なのか。自分のことを正しく理解すること、それがパートナーに血友病と遺伝のことを伝える時の大前提になるかと思います。
2、今のお付き合いはどのようなものなのか
お付き合いしている男性がいるとしたら、「自分が保因者であるということを伝えないといけないのかな」と思うことがあるかもしれません。しかし、いつ伝えたらいいのかな?と悩む前に、その男性とのお付き合いがどのようなものなのかあらためて考えてみる必要があるかと思います。成人してからの恋愛が全て結婚に向かうとも限りません。関係が深まるプロセスの中で、少しずつ“結婚”を意識するようになってくるのが自然な流れだと思いますが、お付き合いによっては、血友病の保因者ということとは関係なく「この人とは難しいかも」ということもあるでしょう。なので、お付き合いをしている男性=必ずしも保因者であることをお伝える相手ではないと思います。
もし、自分が保因者であることを伝えるべきかどうかお悩みでしたら、その前にその男性とのお付き合いが真剣なもので、結婚に向かう可能性があるかどうかをまず考えてみてはいかがでしょうか。
3、彼に話すタイミングを決める
真剣なお付き合いをしていて、このままいくと結婚の可能性もあるかもしれない…。そうなると、やはり自分が血友病の保因者であると伝えることを考えてみましょう。
お付き合いの長さは関係ないかもしれません。恋愛の形は千差万別です。まだ日が浅いお付き合いでも十分に将来を意識する相手になることもあります。感覚的なところも大きいのでなんとも言えませんが、少しでも未来を描ける相手であれば、それはもう伝えることを考えるタイミングではないでしょうか。早ければいいというものではありませんが、あまりにもお付き合いが進行してしまってからでは伝えるタイミングを逸してしまうことがあります。血友病は遺伝の病気なので、結婚の先にある出産、育児にも大きく関わってくる問題です。できればお互いが事実を共有し、共に未来を描いていくことが理想なのかもしれませんね。
4、彼への説明の仕方を決める
いざ彼に説明しようと思っても、何をどこから話して良いのかわからないという方がほとんどでしょう。実際、保因者の方からこのような相談は多くあります。血友病という病気そのものについての医療的な正しい知識を伝えることも大事ですが、その保因者である女性との結婚が一体どのようなものなのか、ライフステージで起こりうることを想定し説明する必要があるかと思います。
まずは、血友病という病気について正しく理解してもらうために、最新の情報をお伝えしましょう。遺伝性の病気であること、病気の症状、治療法、生活への影響、治療費のことなどあくまで事実をもとにお伝えするのが良いかと思います。特に治療法と生活への影響については一昔前と今とでは状況がまったく異なっているのできっちりと説明することがポイントです。近年の血友病治療の進歩はめざましく、それに伴い血友病患者の日常生活も大きく変化しています。人によっては健康な人と変わらずに運動することができると知るとびっくりする方もいらっしゃるでしょう。そして医療費ですが、血友病の治療に関しては公費負担となっており自己負担がないことも意外と知られていない事実なので、是非お伝えしていただきたいところではあります。
そしてこれらを伝えた上で、いよいよ自分そして生まれてくる子どもにフォーカスして説明をすると良いでしょう。まず自分のことですが、保因者と言えども全く何の症状もないとも言えません。程度の差こそありますが、出血が止まりにくいといった血友病ならではの症状を軽度に持っている方もいらっしゃいます。大けがをした時、手術時、出産時には注意が必要なので、保因者である自分のことをパートナーには伝えておくといいでしょう。
次に子どもについてです。血友病保因者女性から生まれる子どもは、男の子の場合は2分の1の割合で血友病、女の子の場合は2分の1の割合で保因者という血友病の遺伝子を受け継ぐ可能性があります。受け継いだ場合に生まれてくる子どもが女の子だった場合は保因者ということになりますが、それが男の子だった場合には血友病ということになります。このことは、最も優先的に考えるべき点ではないでしょうか。もし生まれてくる子どもが男の子で血友病の場合を想定して、本人にはどのような医療が必要になりどのような生活になるのか。2人で血友病の子どもを育てていくということがどんなことなのか。子どもを持つ前に是非話し合ってみて下さい。
相手に説明することも含め、保因者にとっては大変勇気がいることだと思います、必要に応じて医療従事者などの協力を得ることもできますので、まずは一人で抱え込まず相談してください。
5、彼が戸惑った場合の対応を考えておく
血友病についての一通りの説明をし、正しい理解が得られたとしても、男性がポジティブな解釈を持つかどうかはまた別の話になります。血友病について何も考えないことも問題ですが、知れば知るほど慎重になる場合もあり得ますし、中には結婚すら考え直してしまう方もいるかもしれません。
ではそのような時に、自分としてはどのように彼に対応すれば良いのか。自分との将来をポジティブに考え直すように根気強く説得に回るのか、あるいは戸惑ってしまう彼に対して、こちらから見切りをつけてしまうのか。いくら考えたところで何が最善の策なのかはわからないでしょう。そこで私たちの出番になります。
もし彼が理解に苦しんでいたり戸惑っている様子だったら、是非お二人で私たちのところにいらして下さい。血友病をとりまく現実について、患者・家族の支援団体としての立場からお伝えできることはたくさんあります。私たちはばたきの相談員だけではなく、遺伝カウンセラーや専門医にお繋ぎすることも可能です。もし生まれてくる子どもが血友病で、その子どもを育てていくことが想像できないのであれば、血友病の患者会にもお繋ぎできます。サマーキャンプなどのイベントで子どもたちの様子を知ることも可能です。様々な角度から血友病を考え現状を知るようになると、また違う見解を持つかもしれません。
結婚を考えるまでのお相手であれば、慎重に伝えたいと思われるでしょう。もし、彼への説明や対応でお悩みでしたら、是非私たちのところに相談に来てください。
6、彼の両親に話すかどうかを決める
彼への説明が無事に終わり、2人で今後のビジョンを共有できたとしたら、最後に彼のご両親に対してどのように説明をするか悩む人は少なくありません。そもそも言うべきか言わないべきか。支援団としては決断するまでの支援はいたしますので最終的にはご本人同士で決めてもらうようにしています。
そこでひとつ大きなポイントがあります。血友病への理解は世代によって大きく変わってきます。血友病を取り巻く環境は日進月歩で、研究も進み治療法も大きく改善されています。もしかしたらご両親の理解と現状が大きくずれているかもしれません。お伝えするのであれば、まずはそこのギャップを埋め、それから自分たちの結婚の意志を伝えるのが良いでしょう。
当人たちの結婚の意志が固くても、もしかしたらご両親からは理解を得られないかもしれません。そのような時にどのように対応するかは考えておくといいかもしれません。しかし、大事なのは結婚をする両者の意志だと思います。当人たちが納得し合ってその上で結婚に向かうことと、2人にしっかりとした絆があって協力し合って家庭を築いていく覚悟こそが重要なのではと考えます。
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血友病保因者の女性は、結婚だけではなく進路や就労、それから結婚後の出産や育児など人生の節々で思い悩むことがあるかと思います。そんな時には問題を客観視し、冷静にアドバイスができる存在があるといいと思います。
私たちはばたき福祉事業団は、血友病患者だけではなく血友病保因者の女性に向けても様々な支援活動をしています。血友病保因者ということで思い悩むことがありましたら、是非いつでもお気軽にご相談下さい。
保因者の皆様のお悩みを柿沼がお聞きします。
事務局長の柿沼はこれまで18年間はばたき福祉事業団で、血友病患者や保因者女性の悩み相談を行ってまいりました。
まずは、こちらの動画をご覧ください。
誰に相談していいか分からないとお悩みの方ははばたきまでご連絡ください。
お待ちしております。